政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「もしもし?お母さん?」
「もしもし?日和?元気にしてる?」
「先月会ったばかりじゃない。元気だよ」
「そう。それで、あなた働かないのかなと思って」
「あぁ、そうだね。元々旅館で働いてたけど…何かしようかな」
「ずっと家にいたって退屈でしょう?子供もいないし。あ、ちなみに子供は?いつ?」
「こ、子供?!まだ考えてないよ!」
突如、母の口から出た子どもというワードに過剰に反応したのは今朝のキス事件のせいだ。
顔を赤らめながら強引に電話を切った。
大学を卒業後、両親の経営する旅館で働いていた。ただ両親が関わっていない会社で働いた経験はない。おそらく周囲からは箱入り娘だと思われているのだと思う。私は本日何度目かのため息を溢した。
結婚を機に私の人生は大きく変わろうとしているような気がする。