政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

今日は確か楓君の会社と業務提携をする会社の社長を呼んでパーティをするとかそういった話だった気がするが、それも清川さんが以前話していたことしか知らない。
楓君はあまり会社のことを話したがらない。
 広いスイートルームでコーヒーを飲みながら窓の外から見える景色を眺めていた。

 意外にも時間はすぐに過ぎていき、あっという間にパーティー会場へ出向く時刻になった。今日は高いヒールを履いているからか、既に踵部分が靴擦れを起こしていた。慣れない靴を履くと結構な頻度で起こる靴擦れにため息を溢した。

「よし!」

それでも、この靴を脱いで会場に向かうことは出来ないから自分に喝を入れてスイートルームを出た。
エレベーターに乗っている最中も緊張で手足が冷えていくのがわかる。

 楓君は会場に既にいるだろうか先に彼を探そう。
会場の出入り口に立っているホテルマンに挨拶をして視線を巡らせて楓君を探した。

 今回のパーティーは立食形式だった。
皆、煌びやかなドレスに身を包みどう見ても社長夫人だとわかる装いだ。男性も仕立ての良いスーツを着て、目は自信に満ち溢れている。まさに社長という言葉がぴったり合うような人たちばかりだ。
 自分はどう見られているのか心配になりながらも胸を張った。今日は舞衣子や海原さんが背中を押してくれている。頑張らなくてはならない。
と…―。

「日和さん」

名前を呼ばれ、瞬間的に後ろを振り返る。
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