社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。

葵さん達が、居なくなった後、近くにいた優香が心配そうに近づいて来た。


「花梨、…大丈夫?社長室に呼ばれるなんて…ただ事じゃないよね?」

「…な…な…なんだろう…ねぇ…」


そして、近づいて来たのは、優香だけではなかった。社長のファンクラブのような女性たちが、全員で近づいてくる。
その全員が、恐い顔をしている。


「姫宮さん!…なんで、貴女が社長に直接呼ばれるの?信じられない。」

「…な…なぜ…でしょうね。…ふ、ふ、ふ…」


変な作り笑いしか出来ない。

私は逃げるように、そっと後ずさりしながら…少し大きな声で独り言を呟いてみた。


「そ…そうだ…急いで…課長の承認印…貰うんだった…」


なんとか、その場所から逃げ出すことに成功した。
それにしても、葵さんの人気は凄まじいものがある。
そんな人とお見合いしたと思うと、背筋が寒くなる。



< 12 / 82 >

この作品をシェア

pagetop