社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
葵さん達が、居なくなった後、近くにいた優香が心配そうに近づいて来た。
「花梨、…大丈夫?社長室に呼ばれるなんて…ただ事じゃないよね?」
「…な…な…なんだろう…ねぇ…」
そして、近づいて来たのは、優香だけではなかった。社長のファンクラブのような女性たちが、全員で近づいてくる。
その全員が、恐い顔をしている。
「姫宮さん!…なんで、貴女が社長に直接呼ばれるの?信じられない。」
「…な…なぜ…でしょうね。…ふ、ふ、ふ…」
変な作り笑いしか出来ない。
私は逃げるように、そっと後ずさりしながら…少し大きな声で独り言を呟いてみた。
「そ…そうだ…急いで…課長の承認印…貰うんだった…」
なんとか、その場所から逃げ出すことに成功した。
それにしても、葵さんの人気は凄まじいものがある。
そんな人とお見合いしたと思うと、背筋が寒くなる。