社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
隠していた事実
「葵、…実は今回の桐ケ谷美和とフォワードグッド社の契約の話が出た時点で、桐ケ谷美和について、調べさせたんだ。」
「政宗お爺様、調べたとは…どのようなことでしょうか?」
すると、政宗さんはゆっくり頷き、話し始めた。
「桐ケ谷美和は、確かに実力のあるデザイナーだが、それだけではなく ――――――」
桐ケ谷美和の成功の裏で、桐ケ谷喜一郎が動いているという噂があるらしい。
ニューヨークに進出している、日本企業に圧力を掛けているそうだ。
他のデザイナーがデザインした服も、人気が出れば桐ケ谷美和の作品、ということにしているという噂もある。
その不正を言い出した企業は、喜一郎に潰されるという話だ。
もし、そのことが本当なら、陰で涙を流しているデザイナーもたくさんいるだろう。
絶対に許されないことだ。
葵さんは、政宗さんの話を聴いて、拳にギュッと力を入れた。
「政宗お爺様、私が桐ケ谷美和に直接、話を聴いてみます。」
政宗さんは、葵さんに向かって何も言わず、微笑みながら頷いた。