花吹雪～夜蝶恋愛録～

だから黒川は、急に高槻さんに出張を命じたのか。

そしてその間に私と寝て、そこへ高槻さんを呼び出した。



「お前らの驚いた顔は、本当におもしろかったよ。あの時は笑いだすのをこらえるのが大変だった」


そう言って、思い返しながら、黒川は笑っている。

対照的に、彩は怒りに震えていた。



「だからって、どうして殺したりしたのよ！」


声を荒らげる彩に、しかし黒川は意にも介さない。



「あいつは今朝、急に『会社を辞める』と言い出した。『そんなことは許さない』と俺は言ったが、あいつは『だったらあんたの犯罪すべてを明るみにする』と返してきた。これはもう、生かしておくべきではないだろう？」

「だから殺したって言うの!?」

「当然だろう。恩を忘れて人の女を横取りしただけじゃ飽き足らず、金で飼われた犬のくせに飼い主に噛み付いたんだ。死んで詫びたって許されることじゃない」


人間と話している気がしなかった。

どうして最愛の人の命は、こんな男に踏みにじられなければならなかったのか。



「今の話、警察に言うから」

「俺にはアリバイがあるし、何より証拠がないだろう。まぁ、こんな時のために金をばらまいているんだから、証拠があったところで警察が動くとは思えないけどな」