花吹雪~夜蝶恋愛録~
震えていた声は、いつしか涙混じりに変わった。
「ずいぶんあとになっておばあちゃんから聞いた話ですけど、お母さん、その頃に付き合ってた人がいたみたいで、要は子供を置いてその人と逃げたってことらしいです」
「………」
「邪魔だったんですよね、私。なのに、そうとも知らずに、私はずっとお母さんを待ち続けてた。それどころか、事故にでも遭ったんじゃないかって心配したりもして」
自嘲する。
美咲は鼻をすすり、瞼の淵にうっすらと膜を張った涙を服の袖でごしごしと拭った。
「豊原さん、最初に私に聞いたでしょ? 『どうしてこの仕事を?』って」
「あぁ」
「ほんとはね、少しでもお母さんの気持ちを理解したいと思ったからなんです」
「……理解?」
「はい。お母さんもあの当時、キャバクラ嬢だったんです。で、そういう仕事をしながら、子供を捨ててもいいと思うほど、誰かを愛した」
「………」
「私にはまだよくわからないんですけど、せめて同じ仕事に就いたら、お母さんのあの頃の気持ちが少しでもわかるんじゃないかな、って」
「もし仮に、母親の気持ちが理解できたとして、お前はそれからどうするつもりだ?」
「どうもしません。ただ、少しは納得できるかな、って。それだったら私を置いていったのも仕方ないね、って、笑って割り切って、昔の嫌な記憶とさよならしたいだけです」
「ずいぶんあとになっておばあちゃんから聞いた話ですけど、お母さん、その頃に付き合ってた人がいたみたいで、要は子供を置いてその人と逃げたってことらしいです」
「………」
「邪魔だったんですよね、私。なのに、そうとも知らずに、私はずっとお母さんを待ち続けてた。それどころか、事故にでも遭ったんじゃないかって心配したりもして」
自嘲する。
美咲は鼻をすすり、瞼の淵にうっすらと膜を張った涙を服の袖でごしごしと拭った。
「豊原さん、最初に私に聞いたでしょ? 『どうしてこの仕事を?』って」
「あぁ」
「ほんとはね、少しでもお母さんの気持ちを理解したいと思ったからなんです」
「……理解?」
「はい。お母さんもあの当時、キャバクラ嬢だったんです。で、そういう仕事をしながら、子供を捨ててもいいと思うほど、誰かを愛した」
「………」
「私にはまだよくわからないんですけど、せめて同じ仕事に就いたら、お母さんのあの頃の気持ちが少しでもわかるんじゃないかな、って」
「もし仮に、母親の気持ちが理解できたとして、お前はそれからどうするつもりだ?」
「どうもしません。ただ、少しは納得できるかな、って。それだったら私を置いていったのも仕方ないね、って、笑って割り切って、昔の嫌な記憶とさよならしたいだけです」