ムボウビハート



 「お待たせ、あらた。」



「ぜーんぜん?」



なんだか、ご機嫌さんなあらたは、あたしの手を引いて、歩き出した。




「どしたの?今日は。」



再び重ねた質問に、



「遅番、だったろ。夜道を独りで歩かせられるかっつーの。」



あたしの手を握って、左右に大きく揺らしながら歩く、あらた。



「たまには夜の散歩もいいだろ?人通りも少ないし、な。」



夜道を2人でゆっくり、歩く。



空にはキレイな、お月さま。



穏やかな、2人きりの、時間。



赤信号に捕まって、立ち止まる。



「ってかさー、結構律儀、だな。俺もあんずも。」



前を向いたままの、あらたのコトバに、




「ん?」



ゆっくりと、聞き返した。




.
< 139 / 179 >

この作品をシェア

pagetop