愛を教えて欲しくない
こいつになにを言っても無駄だ、と早々に諦め壁に身を預けて、1人立ち上がって喋っては座るを繰り返すクラスメイトたちを呆然と眺める。
着々と順番が進んでいき、「次ー」と呼んだ担任の目線を辿れば、見慣れたはずの顔が見慣れない髪色のせいで別人のように感じる幼馴染が立っていた。
「佐久 恋兎(さく れんと)です。恋するうさぎって書いてれんと。好きな食べ物はオムライスで、好きなことは料理です。1年間よろしくお願いしまーす」
鮮やかなオレンジに染められ、真ん中で分けられた前髪から、目鼻立ちのきりっとした綺麗な顔を覗かせた恋兎に女子たちがキラキラとした視線を向けて小さく黄色い声をあげている。