愛を教えて欲しくない



それからまた数人が自己紹介をしたあと担任の掛け声とともに立ち上がった胸元まである紫に染められた髪をはらりとなびかせた人物にクラス中の視線はすぐ釘付けになった。


混ざりあった数色の紫は奥行も感じられる程で、蛍光灯の光に照らされ輝く髪を耳にかけ、数秒無言で教室を見回して、淡い赤に染められた唇を動かした。


「高蔵 那緒(たかくら なお)です。好きな食べ物は肉。好きなことは幼馴染と出かけること。」

よろしく、と言いながら腰を下ろした那緒に対して恋兎がぱちぱちと手を打つとぼうっと那緒を見つめていたクラスメイトたちも促されるように拍手を送った。
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