愛を教えて欲しくない
トンネル
私と慧の初めての出会いは小さなトンネルの中だった。
私たちが通っていた幼稚園には山型の大きな滑り台があった。
山の中にはいくつかトンネルが通っていて、日の光が細い枝木たちの隙間から数知れず差し込んでくるトンネルのひとつがお気に入りで、何をするでもなく、1人でそこに座っているのがとても好きだった。
誰とも馴染まず、トンネルの中にずっと1人でいる私に先生たちも不思議な様子で見守っていた。
だけど、ひんやりと冷たいトンネルの中に座って、ただぼーっとするだけの時間がとても好きだったのだ。
園庭の広い保育園だったから、遊具もいっぱいあって。
だから、他の子たちはいつしか私が座っているトンネルには近寄らなくなっていった。