愛を教えて欲しくない

慧を呼んだ声に驚いて、思わず口を噤んだ。

声の聞こえた廊下から息を切らした女の子がこちらへ向かって走ってきたのが見えて、立ち上がった慧にバレないように少し距離をとって座り直した。


「良かった〜、まだいた!」

「なに?」

と返事をした慧はいつもの微笑みはどこに行ったんだとツッコミたくなるほど愛想が悪い。


「えっとね、これからクラスのみんなで親睦会しないかって話してて…」

ああ、どこかで見たことがあると思ったらクラスの子だったんだ。

ほんのり茶色に染められ耳の少し上あたりで2つに結ばれて巻かれた髪をゆらゆらさせ、慧と話している。

ふわふわしてて、小さくて、いかにも男子が好きそうな女子って感じだ。

そんな可愛い子に話しかけられているのに慧は興味無さげに気の抜けた返事ばかりしている。

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