愛を教えて欲しくない
「頼りにされてるでしょおれ」
とふふんと満足気な笑みを浮かべた慧に«あの人は私のお守りが面倒なだけだよ»だなんて、とても言い出せずに「はいはい」と適当な返事を返すことしかできずに俯いた。
「全部おばさんがまなちゃんのためにしてくれたんだよ」
私の心を見透かしたように目尻を下げて微笑んだ慧に手を引かれて抱きしめられたかと思うと小さな子を宥めるように頭を撫でられた。
今日はずっとこの腕に巻かれてばかりだな。慧に倣うようにして慧の背中に腕を回して丁度顔の位置にある肩に顔を埋める。
素直に腕を回してきた私に吐息混じりに笑いながら今日は素直だねと右手にぎゅっと力を込めて抱きしめて、左手で頬をつつかれた。
「うるさいよ」
慧の肩でもぞもぞと吃った声をあげた。
たまに慧の私を暖かく包み込むこの優しさに全てを預けてしまいたくなる。
なにもかも忘れて、なにもかも捨てて、全てを慧に預けられたなら、私はどれだけ幸せだったことだろう。
私は慧に依存している。
どうしようもないほどに深く。