愛を教えて欲しくない
1時間ぶりの教室に着いて端から端までぐるりと見渡してみたけど、お目当ての3人ははまだ戻ってきていないようだった。
探していたはずなのにどこかほっとして、ひと息つこうと自分の席に座って、スマホを手に取りTwitterを開いた。
下から上に指を動かし、画面をスクロールしながらTLを見ていたら、実写映画の予告動画が目に入った。
あ、と思って、指を止める。
音楽を止め、自由だった片方の耳にもイヤホンをつけて、万全の状態になったことを確認し、動画の再生ボタンをタップする。
好きな女優が主演をやるというその映画は、ヒロインの冴えない女子高生が年上の幼馴染から告白されるところから始まる。兄妹のように育てられてきた幼馴染からの告白に戸惑い一度は曖昧に断るも、だんだんと幼馴染を意識し始めヒロインも恋に落ちる。恋敵への苦悩や自分自身との葛藤を乗り越え、幼馴染に似合う人になるために奮闘していく、という原作の漫画も非常に人気な作品らしい。
少女漫画はあまり見ないのでよくは知らないが、発表されてすぐだというのにもう既に5万人近くのフォロワーといいねのついた予告動画をみれば、詳しくなくてもその人気っぷりは一目瞭然だ。
フォロワーの多くには、原作ファンや幼馴染役の俳優ファンもいるだろうけど、やっぱり一番はヒロイン役の女優目当ての人じゃなかろうか。
この女優の演技は格別だ。幼馴染に恋に落ちたシーンに、恋する前と恋した後の幼馴染へ向ける表情の違いだったり、1分ちょいの予告だけでここまで繊細な演技を魅せてしまう表情を変えられる若手の女優さんはこの人くらいなんじゃないだろうか。ふふ、と自分のことでもないのについ鼻が高くなってしまう。
もし、もし私にこの人の演技力があったら、そしたらもっと、楽に生きられてたのかな、楽に生きられるんだろうか。