愛を教えて欲しくない
ふとよぎったもうどうにもならない思案をすぐに頭の中からかき消し、自動再生でループしている予告動画にもう一度目を落とした。
愛しそうに幼馴染を見つめるヒロインの笑みを見ながら、公開が待ち遠しいな、と思わず私も笑みがこぼれる。
そんな、少し上向いていたはずの気分がぐんと急降下したのは、別に何があった訳でもない。
ただ、ただふと、私には恋なんて、ましてや愛なんて一生縁がない言葉なんだろう、と頭によぎってしまっただけだ。
ただそれだけ。
両耳につけたイヤホンのせいで、世界が無音に感じる。
誰もいない世界でひとり。誰かが私を気にとめることもない。
あーあ、防音性の高いイヤホンになんてしなきゃよかったかな、なんて思いながら、いつの間にかスリープ状態になって、黒い画面をを映していたスマホを見つめる。
黒は暗くて狭いあの場所を思いだすから、あまり好きじゃない。
なのにどうしてか、目につくのは黒いものばかりでうちの中は真っ黒だ。
はぁ、とため息を零して、両耳を塞いでいたイヤホンを取った。
「なんでため息なんかついてるの?」
さっきは誰もいなかったはずの背後から聞こえた声の方をぐんっと勢いよく振り返ると、放置されて寂しかった、と口を尖らせて頬杖をつき私をじっと見つめる幼馴染の姿があった。