何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「なぜ言わなかった?」

続いてかずさが居るのは、宰相をはじめとするこの国の重要人物達の前だった。
今日は人に会ってばかりで、なんだか忙しい…。
緊迫した空気の中で、かずさはそんなどうでもいい事をぼんやり考えていた。

「天師教は、使教徒だろう?」
「殺させてはいけない。」

彼らが口にしているのは、天使教が襲われた今回の事件の事。
なぜこの事件が起こる事を、知らせなかったのか…。

「そうですね。」

かずさは臆する事なく、いつもの調子で一言だけ返した。

「なぜ…。」
「彼を試したんです。」

宰相が口を開いたと同時に、かずさもまた言葉を発した。
無駄な言い合いをしても時間の無駄。

「試しただと?」

宰相が不快感を露わに、眉をひそめた。

「それにわかっていましたから。天師教が必ず助かる事も…。」

かずさは宰相達を嘲笑うかのように、そう言ってみせた。

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