何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「…。」
天音は星羅と一緒に、部屋への道を無言で歩いていた。
星羅はまだ顔を伏せたまま。一向にこちらを見てはくれない。
「天音…。」
しかし、その沈黙を先に破ったのは、星羅だった。
「え?何?」
天音は、突然星羅に話しかけられ、戸惑いながらも何とか答えた。
「京司の事知ってるんでしょ?」
「え…うん。」
「私…。」
星羅は足を止めて、廊下にある窓から外を見た。
「…私も京司を知っているわ…。」
そして、星羅は消え入りそうな声でつぶやいた。
「え、そ、そうなの?」
それを聞いたのは今日が初めての天音が、驚くのも無理はない。
そして、二人は同じ使教徒だから知り合いなのだろうか?とそんな的外れな想像を膨らませた。
「彼はもう忘れているかもしれないけど、幼い頃はよく一緒に遊んでいた。」
しかし、星羅から返ってきたのは、天音の予想とは違う答え。
二人は子供の頃からの知り合い、いわば幼馴染という奴のようだ。
「え…そう…だったんだ。」
しかし、正直天音にはピンと来なかった。
さっきの口ぶりから言うと、彼女は今は京司とは会ってはいないようだ。
幼馴染とはそう言うものなのだろうか?幼馴染のいない天音には、その辺は正直よく分からない。
「彼がこの城に来るまでは…。」
「え…?」