何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「雪、まるであなたみたいね。」

かずさが、暗くて冷たいその場所で、今日も懲りもせず彼に話しかけた。

「あ?またお前かよ。」
「冷たい。」

かずさは、また今日も月斗のいる牢屋に足を運んでいた。

「死んでないかと思って。」
「俺は死なねーつったろ。」
「そう…。」

なぜかずさは、足しげく彼の元へ通うのか。それは月斗には、全くわからなかった。
かずさが話し好きだとは、到底思えない。
いつも話しかけてくるくせに、答えはいつでもそっけない。
そんな彼女を月斗が不可思議に思うのも無理はない。

「…どうして私が、こんな場所に来れると思う?」

かずさは、牢屋と反対の方向に目線を移し、また月斗に問う。
かずさにしては、今日は口数が多い。

「うるせーな。さっさと帰れよ。」

しかし月斗は、かずさには全く興味がない。
月斗はかずさ以上に、人と話すのは嫌いのようだ。

「私は、この城の中はどこでも行けるの。顔パス。」

そんな月斗に対して、今日のかずさは話をやめようとはしない。

「…。」

ついに月斗は、かずさに背を向けて横になった。
これ以上、会話をする気はないと言わんばかりに。



「私はこの国直属の預言者だから…。」



月斗が聞いていようが、聞いていまいが関係ない。



かずさは、なぜかその事実を今口にした。



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