何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「天音どこ行ってたの?」
大広間に戻って来た天音に華子が尋ねた。
「…別に…。」
天音はただそっけなく答えた。
結局、なぜ自分が皇后に呼ばれたのか。それは、分からずじまいだった。
「張り紙みた?」
「え?見てないけど。」
天音が不在の間に、妃候補に伝える伝達事項が、大広間の前の掲示板に貼られていた。
天音はその掲示に気がつかず戻って来てしまったのだが、大広間の中がざわついているのを、天音は密かに感じていた。
「…妃決まるって。」
「え…。」
それは突然の告知だった。
「何か、天師教様に一人一人会うんだって。」
「天師教さんに会う?」
それは妃候補達、いや誰もが予想していなかった決め方だった。
結局、士導長の意見が通り、妃候補と天師教が対面する事が実現する事となった。
「結局は天師教様の好みって事かー。」
華子が口を尖らせてそう言った。
「一日一人ずつ会うんだってさ。で、明日は早速星羅の番。」
「…そっか。」
順番は決められていて、真っ先に天使教に会うのは星羅だった。
天音は、どこか諦めたように、すんなり納得していた。
「天音の順番は最後だったよ。」
「華子…。」
天音は覚悟を決めたように、華子の名を呼んだ。
「ん?」
「私、妃にはなれないよ…。」
そして、その一言をしぼり出した。