何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「…。」

しかし華子は、何も言わず、じっと天音を見つめるだけだった。
それは、天音の想像していたリアクションではなかった。
そして、華子のその瞳は…

(…あの人と同じだ。)

華子のその視線が突き刺さる。

「やっぱり、私には向いてないよ…。」

その視線から逃れるように、天音は華子から目を背けた。

「そっか。でも向いてないんじゃないんでしょ?」


(知ってる。)

華子はいつだって真っ直ぐだった。



「妃になりたくないだけでしょ。」



今の天音には、そんな彼女の真っ直ぐな視線が、突き刺さる。
それは、まるで針のように。


「…天音。もうすぐお別れだね。」


華子の視線が少し離れ、天音はホッと胸を撫で下ろした。

「華子…。」
「あ、私はなるよ!妃に!」

そして最後は、華子らしい言葉といつもの笑顔を見せた。


「…どうして…?」


そんな彼女に思わず天音は尋ねた。
彼女はどうして、いつまでも一つの事に真っ直ぐでいられるのだろうか。


「だって、自分のやりたいことやるって決めたから。」


やっぱり華子は華子だった。


「後悔しないように。」

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