何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
星羅は、長い廊下を兵士に連れられ歩いていた。
普段着慣れない長い丈のドレスのため、星羅の足取りはゆっくりで、前を歩く兵士とは少し距離ができてしまっていた。

「これは始めから決められた運命…。」

何故かこのタイミングで、星羅の前からやって来たのは、かずさだった。
すれ違い様にそうささやいたかずさは、星羅の横を何食わぬ顔で通り過ぎようとした。
やはり彼女は、この城のどこでも自由に行く事が出来るのか…。
そんな事を、星羅は頭の片隅で考えていた。

「…。」

そして星羅は、足を止めた。

「会わなければよかったと、後悔しても遅い。」

そして、かずさも足を止め、またポツリと星羅の背中へと言葉を投げかけた。

「今の時代には今しかない。」

その言葉をはっきりと口にしたかずさが振り返り、じっと星羅の目を見た。

「私は後悔をしない。そして後ろも振り向かない。」

そして、星羅は真っ直ぐ前を見据え、また歩き出した。

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