何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「あなたが妃を決めるんですか?どうして?もう、京司はいないのに…。」
「…。」

その言葉を何の躊躇もなく、星羅は口にした。
彼は天使教はもういない…。
星羅はそれを知っていたからこそ、妃を選ぶ事に何の意味があるのかと皇后に問う。
しかし、その言葉を聞いた皇后は、取り乱すことも問いただすこともせず、やはり落ち着いて口を開いた。

「私の手でこの国を終わらせることはできないわ。」

そして、皇后がいつもの凛とした態度で、冷静にそう答えた。

(この国を簡単に終わらせるわけにはいかない。あの人が守ってきたこの国を…。)

「…もし、京司が帰ってこなかったら?」
「…それでも、私はあきらめきれない。」

ガタ
星羅は急に立ち上がった。
もう話す事はないと言わんばかりに。

「…さようなら…おばさん。」

そう言って、星羅は自ら皇后に背を向けた。

「星羅ちゃん。歌、歌ってる?」

皇后が去ろうとする星羅の背中に問いかけた。

「…華子って子に余計な事言わない方がいいですよ。」


パタン
星羅はそれだけ言い残して、扉を閉めた。

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