何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「やっぱ、わいは肉体派やからなー!」

りんはそんな京司に構う事なく、あっけらかんとそう言ってみせた。

「わい、天師教の事だーーーーーい嫌いやってん!」

すると、突然りんが空に向かって大声で叫んだ。
それは、今までの会話の流れとは、全くかけ離れた一言。

「…声でかい…。」

時刻は、もうすっかり夜。
常識のある京司は、りんの大声が、近所迷惑にならないか気が気ではなかった。

「わいの村もつぶされた…。それに反発した親も殺された…。」
「…。」

京司は黙って、りんの言葉に耳をかたむけた。

「神様は何してもいいんか?ってな…。」
「…。」
「でも、あん時変わったんや。お前がリーダーに土下座した時。」
「え…。」

いつの間にかりんは、京司の方を真っ直ぐ見ていた。

「京司、ええんか?」

りんが、今まで見たことないくらい真剣な顔で、こちらを見ている。

「何が?」
「人間っちゅうのは、わがままな生き物や!そう思わんか?」

そう言ってりんはまた、天を仰いだ。

「…そうかもな。」

りんの真似事のように、京司も上を思いっきり見上げた。
そんな京司が見上げた空には、見た事のない数の星が瞬いていた。

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