何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】

「うわー緊張!!」

次の日の朝、早速華子は、天師教のいる部屋の前まで連れてこられていた。

コンコン

「入りますよ。」

華子の隣にいた皇后が扉の中へと声をかけた。

ゴクリ
華子は思わずつばを飲み込んだ。さすがの華子も、この時ばかりは緊張を隠せない。
なぜなら、待望のこの日が来たのだから。

「どうぞ。」

ガチャ
皇后がその扉を開け、華子も一緒に部屋の中へと足を踏み入れた。
朝の清々しい日の光が、華子の目に飛び込んできた。
すると、部屋の中に居た彼がくるりとこちらを振り返り、華子を見た。

「はじめまして華子。」

そして彼が、ニッコリと華子に向かって笑いかけた。

「わーお!青い目の美少年だ!!」

彼の爽やかなスマイルに、華子は思わず声を上げた。
そこには、華子が待ち望んでいた、天使教の顔があった。
もちろん今日の彼は、顔を隠してなどいない。
彼の青い目が朝日に照らされ、まるでビー玉のように輝いている。
京司がいなくなった今、天使教としてその座にいるのは、青であった。

「これ!!」

華子の無礼な態度を見かねて、同行していた士導長が華子の袖をひっぱった。
作法の授業だって一応受けてきたはずなのに、華子には何の意味もなかったようだ。

「よろしくね!」

相変わらず誰に対しても物怖じしない華子は、そう言って青に笑いかた。
そして、その場の空気は、一気に華子色に染められていった。

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