何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「たまげたなぁーーー!!」

次の日の昼時、その号外の紙を見て、りんが目を丸くしていた。

「華子……。」

天音は遠い目をして、その号外を眺めていた。
その号外は、華子が妃になった事を伝えるものだった。
そしてそれは、国中にばら撒かれていた。もちろんそれは、国の手によって。
彼らの狙いは、妃が決まった事でこの国の平穏をアピールする事。
反乱軍の仲間の誰かが、近くの町で手に入れたであろう号外を、天音とりんは目にしていた。

「妃が決まったとなりゃ城下町はお祭り騒ぎやなー。」

りんは呑気に、そう言って笑い飛ばした。

「妃…。」

天音がまた思いを馳せるように、小さくつぶやいた。
自分だって少し前まではそれを目指していたはずなのに、今となっては、それはまるで遠い昔のようだ。

「華子が妃かー。まったくわからんもんやなー。」

天音のそんな気持ちに構う事なく、そう言ってりんはまた、ケラケラと笑った。
あんな自由奔放な華子が妃になるなんて、誰が想像しただろう。

「クスクス。この写真、華子らしい。」

天音は、りんのその楽しそうな笑い声に感化されたのか、号外にのっている華子の写真をマジマジと見つめ、思わず笑みがこぼれた。

「そうやな。ピースする妃なんて華子だけやな!」

その写真には、満面の笑みでピースをしている華子の姿が映っていた。
やっぱり妃になっても、華子は何ら変わっていない。
その事が天音の心を、じんわり暖かくさせた。

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