何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「…。」

静かだ…。

天音は部屋にただ一人残っていた。
おそらく妃候補で部屋に残っているのは、天音だけだろう。
いや、妃候補だけでなく、城で働く人々の多くが彼の演説を聞きに行っているのだろう。
そう、城はまるでもぬけの殻のようにガランとして、静まり返っていた。

『覚悟は…あるのか?』
『それでも妃になる?』
『全てをしってるのは国なのよ。』

「天使教……。」

天音は虚ろな目で宙を見つめたまま、なぜかその言葉をつぶやいた…。


「ちがう…。」



『また忘れればいい?』



「あ…ま…ね…。」
「え?」
「あまね。」

彼がもう一度、愛しいその名を、噛みしめるように呼んだ。

「せ…い…。」

天音は目を見開いて彼を見た。
なぜか天音の部屋の扉が開いていた。
そしてその扉の前には、どこか懐かしい青の姿があった。


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