何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「天音ー!!どこ行ってたの?」
天音が部屋に戻ると、すぐ様華子が駆け寄ってきた。
「え?ちょっと町に…。」
天音は、華子のあまりの心配ぶりに、きょとんとした表情で華子を見た。
「部屋に帰ったらいないから、心配したんだよ。」
華子は、天音が部屋にいない事に気づき、どこに行ったのかと、居ても立っても居られない程心配していたのだ。
そう、華子が心配するのも無理はない。
この城に帰ってきてから、天音は全く町へと出る事をせず、ほとんど部屋に籠りっきりだったのだから。
「アハハ。ごめんごめん。」
天音は、心配そうに見つめる華子に、笑顔で答えてみせた。
「アレ?なんか戻ってる。」
すると華子は、早速天音のその変化に気づいた。
そこに居たのは、ここ数日の抜け殻のような天音ではなかった。
前のように笑う天音の姿が、そこには戻ってきていたのだ。
「へ?」
「ま、いっかー!!おかえり。」
そう言って華子も笑った。
「ただいま。」
天音も華子のその笑顔に答えた。
なんだか今日は、この言葉が妙にくすぐったい。
帰れる場所がある事が、こんなにも安心するものだと、天音はこの時初めて身に染みた。