何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
ヒヒーン
その男は城下町の入り口で馬から降りた。
「お前はここで待ってろ。」
彼は、自分の馬にそう語りかけ、一人町の中へと歩を進めて行った。
「いらっしゃーい。」
「安いよお兄さん。」
彼が思っていたよりも、この町は活気にあふれていて、人々の顔には笑顔が溢れていた。
しかし、彼は周りに目もくれず、一直線にその場所を目指した。
「あれが城か…。」
彼は広場で足を止めた。
そんな彼の目の前には、大きな城が彼を見下ろすように、そびえ立っている。
「あら。お兄さん男前だねー。」
広場で物売りをしている気さくなおばさんが、彼に話しかけてきた。
「へー有名人とちゃう?」
そして、そのおばさんの近くにいた、おしゃべり好きのりんが彼の顔をのぞきこんだ。
「…こりゃー、違う意味で有名人やなー。」
そう言ってりんは、なぜか感心した顔でその男をじっと見た。
「お前…。」
男はりんの事を確かに覚えていた。
(確か以前この町に入ろうとした時に、辰と一緒にいた男…。)