何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】


「大昔、この国、いやこの地球が滅んだ理由の一つには、文明の発達にあったのではないかと言われている。」

その日の歴史の授業中、士導長はこの国の歴史について語り始めた。

「人間達は、自分達の暮らしの豊かさばかりに気をとられて、自然を顧みる事をしなくなった。空気は汚れ、気温は上昇し、この地球のバランスが崩れてしまった。」

士導長は淡々と話し続けた。

「え…。」

その士導長の言葉に反応した天音は、誰にも聞こえないような小さな声をもらした。

「人々は星を見なくなった。空を見なくなった。自然を感じなくなった。」

(ちがう…。)

「先人達の失敗から学ばなければ、また同じことを繰り返してしまう。私達は、この地球の自然を、守らなければならない。」

ゾク
天音は背筋に、また冷たい何かを感じた。

(この感じ…まただ…。)

それはまるでデジャビュ?

「今のこの地球は一定の気候が保たれ、過ごしやすい。私達にとっても自然にとっても。」
「天音?顔色わるいよ?」

華子が、隣に座る天音の異変に気づいて、声をかけた。
天音の顔色は真っ青で、華子が放っておけないほどだ。

「え…。うん大丈夫。」

しかし、天音は何かを誤魔化すかのように、あいまいに返すだけ。
そう、この感情は触れてはいけないもの。
自分の潜在意識がそう訴えかけているのを、天音は知っていた。

「ホッホッホ。少し歴史と離れてしまったのー。」

しかし、そんな天音をよそに、士導長は呑気にそんな事を言って笑った。

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