何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【後編】
「あ、そうだ。この池もう鯉いなくなっちゃったんだよ。」
そう言って天音は池を覗きこんだ。
それはまるで、初めてこの池に来た時と同じように。
ピチャ
するとその時、もう鯉はいなくなったと思っていた池に、一匹の鯉が現れ、勢いよく水面を蹴った。
「あれ!なんだまだ一匹残ってたんだ。きっと隠れてたんだ。ね、京司!」
シーン
天音が顔を上げて振り返ると、そこに彼の姿はなかった。
「あれ?京司?」
天音の頭上には、月が儚げにそっと輝いていた。