揺るぎのない愛と届かない気持ち
会社ではあの二人は別れたらしいと、
女の子たちの格好の噂となったが、
それでも
淡々と友人同士を貫いている俺たちに、
次第に周りからの興味が
失われていったようだった。

俺は、
もう社内恋愛は煩わしいと思ってしまった。

それから
先に恋人ができたのが長内だった。
どういう人かは知らないけど、
幸せそうな長内を見て安心した自分に
やはり罪悪感があったんだと、思った。

俺も長内と別れて、
何人かの人と短い出会いと別れを
繰り返していたが、
友人の結婚式で新婦の友人の紗英と出会うという、
最もベタな出会い方をした。

一目惚れだ。

式のチャペルの中でも、一際美しかった。
花嫁ではなく紗英が。
すらりとした姿体は、
シルクタフタという生地だと
後で教えてもらった、
シャリ感のあるグリーンと黒のコントラストが
印象的な、
膝下まで丈のあるドレスに包まれていた。

ピンヒールの足も美しい。

容姿もだが、その動作が美しく、
俺は多分惚けたように見つめていたと思う。

俺の周りの男たちも

「いい女がいるぜ。」

と口々に言っていたので、
あっという間に
紗英は注目を浴びていた。

披露宴、2次会と続き、
何とか、
2次会で紗英の近くまで行きたいと、
まるで恋を覚えたての中学生のように
心ときめく自分がいて、
我に返っては苦笑していた。

「篠原くん、紗英を紹介してあげようか?」

友人の花嫁香衣(かえ)さんが
そんな俺を見かねたのか、声をかけてくれた。
 
「とても大人びて見えるけど、ピュアな子だから
遊びでちょっかいをかけるのは
やめてね。」

と釘を刺しつつ、彼女は紗英を呼んでくれた。

「こちら私の親友、なんと幼稚園から一緒の
高木 紗英(たかぎ さえ)。
こちらは海斗(かいと)の大学時代からの
親友の篠原 東吾くん。
イケメンでしょ。」





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