私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
とは言ったものの、要も菜々美の本意を計りかねていた。
きっと高村誠治との縁談は断ってくると思っていたが…まさか友人と結婚?
特別室からのエレベーターを降りながら、中塚の人の良さそうな笑顔を思った。
「アイツが簡単にプロポーズするとは思えない。何かあったな…。」
一階に着いてエレベーターの扉が開くと、丁度、脇坂医師に出くわした。
「あ、奏佑先生。お世話になってます。」
「鳴尾さん…お見舞いですか?」
「夜昼関係無く、年寄りは呼び出してくれましてねえ。」
「それだけお元気になられたんでしょう。」
「先生が新しい分子標的薬を勧めて下さったお陰です。」
「いえ、恒三さんに適応があったからです。」
「元気になりすぎて、大変ですよ。」
「何か?」
「孫の結婚相手探しが本格化してまして。」
「あなたのお相手ですか?」
「いえ、菜々美です。先生もこの前見たでしょう?高村を勧めてたの。」
「ああ…。」
曖昧に、奏佑は返事をした。あの夜の出来事が蘇って来る。