私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
「菜々美のヤツ、断ってきたんですけど、どうやら相手を匂わせたらしいんです。」
「ええっ!」
自分との事を恒三に打ち明けたのかと冷や汗が出た。プロポーズもまだなのに…。
「何だか急な話で…。じい様が期待し過ぎて困ります。」
「はい。」
どう返事しようかと奏佑は言葉を探した。ここは男としてキチンと対応しなければ。
「相手は会社の同期じゃあないかと思うんですけど…。」
聞き間違いか、可笑しな言葉が聞こえて来た。会社の同期?
「はあ?」
「ま、近いうちに本人に聞いてみますよ。スミマセン、愚痴ちゃって。」
そのまま要は帰って行ったが、奏佑は信じられない気持ちで一杯だった。
「何で?何でそんな話になっているんだ?」
高村の話を断ったのはわかる。
だが、何で自分ではなく他の男と結婚する話になっているんだ?
何しろ、あの夜は詳しい話が出来なかった。
あれから一ヶ月近く、連絡しなかった罪悪感はあったが
これまでの10年余りを思えば、一ヶ月なんて取るに足らないと思い込んでいたのだ。
『菜々美が、同期の男と…結婚?』
多分、ホテルで会った時、一緒にいた男だろう。
好感の持てる男だったが、菜々美を取られるかもしれないと思うと別だ。
急いで確認しないと、今度こそ間に合わない。