私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


『君、菜々美の新しい住所を知らないのか?』


良く考えれば不思議な言葉だったが、奏佑にそんな事を思う余裕は無かった。

『菜々美に会いたい。』その一心で、車を飛ばしてきたのだ。
大学病院での仕事は残っているが、とにかく菜々美の体調が心配だ。


恒三に教えて貰った、高円寺にあるクラシックな外観のマンションに着いた。

『これか…前に、従姉妹の瑠美さんがあれこれ言ってたのは…。』

確かに高級感のあるマンションだ。
菜々美が自力で購入するには、どれくらい必要だったんだろう。

『まさか…。』

瑠美の言葉が奏佑の頭を掠めた。

『遺産』『お金目当て』どれも酷い言葉だった。

建物の前に来客用の駐車スペースがあったので車止めると、急いで入り口に向かう。

聞いていた部屋番号のインターホンを鳴らす。

一度目。応答が無いので、暫くしてもう一度。
待つ時間の何と長く感じられる事か。


『…はい。』

「菜々美、俺だ。」

『…どうして、ここが…?』

「話がある。入れてくれ。」


押し問答していても、近所迷惑だと思ったのだろう。
菜々美はすぐに彼を部屋に入れてくれた。


「どうかしたんですか?昼間のこんな時間に…。」

奏佑は久しぶりに菜々美と向き合った。

もう化粧を落としている様だが、顔色の悪さが気になった。
医者の習性かもしれない。彼女が貧血気味だとすぐに見抜いた。

菜々美はドアの側に立ったままだし、中に入れとも言わない。
玄関先までしか入れてもらえないのかと、奏佑は苛立った。

「要君に聞いたんだ。君が、会社で倒れたって。それで恒三氏に往診を頼まれた。」

「え?要さんが?」

「あ、俺が知らせたんだ。」

部屋の奥から中塚郁也が姿を見せた。

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