私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
 

 要と入れ違いに特別室を訪れた奏佑は、医者としての仕事モードだ。
恒三に検査結果を説明しながら、症状が安定してきた事を告げていた。

「副作用が心配されましたが、今回の6週間の間隔での治療は終わりました。
 次回からは、これほど入院期間が長期で無くても良さそうですね。」

「それは助かる。流石にひと月以上も入院はしていられないからな。」

現場を離れているから気になっていたのだろう。
恒三は冷徹で知られたビジネスマンの顔になっている。

その時、特別室の電話が鳴った、外線からの様だ。

「どうぞ、出ても大丈夫ですよ。」

「診察の途中ですまないね、もしもし…。ああ、要か…。何だって?」


要からの電話の様だ。さっきまでの厳しい顔が、好々爺になっている。

だが、電話を切って奏佑の方を向くと、また厳しい目つきに変わっていた。

「脇坂先生、この後のご予定は?」

「大学へ戻りますが?」

「すまないが、孫の往診を頼まれてくれないか?」
「要さんですか?」

「いや、菜々美が会社で倒れたらしい。」
「ええっ!」

「心配だから、診察してもらいたい。そのついでと言っては何だが、
 話があるから明日にでも私のところに来るように伝えてくれたまえ。」

「わかりました。往診します。ご住所を教えて下さい。」

「君…。菜々美の新しい住所を知らないのか?」

「は?」


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