私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


「宜しかったですわね、鳴尾様。お優しいお孫さんで。」
「素敵な贈り物ですわ、鳴尾様。」

招待客には私の立場が伝わっているのに驚いた。

「まさに!柔らかい手触りですし、軽いので年寄りには何よりです。」

「この毛糸、どちらでお求めに?」
女性達は、この毛糸が気になるようだ。

「弊社…三ツ藤商事がイタリアから輸入したばかりの物でございます。
 クリスマスシーズンから、都内の殆どのデパートでもお求めいただけます。
 よろしくお願いいたします。」

私はいつもの営業スマイルだ。鳴尾家の身内という立場よりその方が私らしい。

「まあ、三ツ藤商事にお勤めですの?」

イタリア直輸入の毛糸の話がきっかけで、何人もの招待客と話す事になった。

菜々美の立場を知っても気さくに話し掛けてくれたので、自然に会話を楽しめた。


ひと通り客達との挨拶が済むと、恒三は引き上げる時間になったようだ。



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