私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
その別荘は、鬱蒼とした森の向こうにあった。
軽井沢では、もう秋の気配が感じられる。
カラマツ林を抜けると急に土地が開けて、会社の寮くらいありそうな建物が見えた。
一部が三階建ての木造建築で、大屋根がモダンながら重厚さも感じさせるデザインだ。
きっと、高名な建築家が設計した物に違いない。
「これが…別荘ですか?」
「はい、鳴尾家の別荘です。大きいでしょう。」
「お掃除が大変でしょうね…。」
高村が笑いを堪えている。この人は、基本的には笑い上戸なんだろう。
この規模が別荘なら、東京にある本宅はどんな屋敷なんだろう。
背中を嫌な汗が流れる。
「この別荘で鳴尾家の当主である貴女のお祖父様が療養なさっておられます。」
「はい。」
「本日ここに、遺言状に関わる方が全員お集りになります。」
「はあ…。」
「といっても、お祖父様の恒三様と貴女の叔父様の大介様
その奥様の貴子様、お子様がお二人です。」
「お子様って…もう大人でしょ。」
「はい。大介様ご夫婦のご長男、鳴尾電子にお勤めの要様と、
ご長女で花嫁修業中の瑠美様です。」
「花嫁修業中…そんな人が現実にいるんですね。」
「ハハハ…。」
ついに高村の乾いた笑いが車内に響いた。