私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


「さ、降りて下さい。」
「は?」

豪華な玄関ポーチの前に車を止めた途端、高村が言った。

「私は車を奥に止めてきますから、降りて下さい。」

後部座席から菜々美がゆっくり降りると、
高村は車を急発進させて建物ウラにあるらしい駐車場の方へ行ってしまった。


ポツンと玄関ポーチに取り残されたのでチャイムを探したが見当たらない。
木製のドアの中程にある丸い金属…これはドラマで見たノッカーと言う奴か。


「ううっ…緊張する…。」

三回鳴らせばいい筈…。じっとりとした手汗を感じながらノッカーを鳴らした。



『やっぱり来るべきじゃあ無かったな…。』

何だかんだと、弁護士二人に言い負かされて来てしまった。

『明日をも知れない高齢のお祖父様に何て申し上げれば…』

最後は泣き落としに負けた、あの日の自分を呪ってやりたい…。


「お待たせいたしました。」

重厚な玄関が開いて、上品そうな初老の女性が出て来た。


「初めまして。瀬川菜々美(せがわななみ)と申します。」

一応、会社の広報部で鍛え上げられたビジネススマイルで名乗ると、
その女性はウルウルと瞳を潤ませた。




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