私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


「いいお式だったねえ。」
「そうだな。」

中塚と並んで歩きながら、菜々美は披露宴の余韻に浸っていた。
披露宴と同じ時間に学会も終了したのか、相変わらずロビーは混雑していた。


「あ、そういえば電話、大丈夫だった?」
「ああ。いつものお袋の愚痴だったよ。」
「いつもの?」
「お前も早く結婚しろってさ。」

「それはタイヘンだねえ。」

「他人事みたいに言うなよ。それより、お前に親戚いたっけ?」

「えっ?親戚?」

「親戚の主治医って人にパーティーの前に会ったんだ。」
「主治医…。」

「背が高くてカッコいい、大人の男って感じだったなあ。」
「そう…。」

奏佑だ。中塚郁也と偶然会った?

「ほら、目立つからすぐわかる。あの人だよ。」

中塚が顔を向けた方向には、脇坂奏佑が立っていた。


ロビーの片隅で、誰かを探している様子だった。


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