私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠
菜々美の姿を見つけると、奏佑は真っ直ぐ菜々美に向かって歩いてきた。
「やあ…。」
「…どうも…こんにちは。」
「今、時間あるかな?」
友人と一緒だからと断りかけたら、中塚が気を利かせたようだ。
「じゃあ、俺はこれで。また月曜日に会社でな!」
「あ、ちょと!」
中塚はサッサとその場から離れてしまった。
「悪いね。どうしても君と話がしたくて…。」
「何のお話でしょう…。」
「立話も出来ないから、カフェにでも座ろうか。」
先に歩く奏佑の背を見つめて、菜々美は今日何度目かのため息をついた。
一階の奥にあるカフェに行くと、混みあっていたが何とか二人掛けの席に座れた。
ゆったりとしたソファーに座って向き合うと、改めて彼の熱い視線を感じる。
「コーヒー?それとも…。」
「コーヒーにします。」
メニューを閉じて注文する姿も人目を引く奏佑だ。
向き合っているフツーの私は、彼の何に見えるだろう。
せいぜい、職場の後輩か…年の離れた従兄妹くらいか…。
「改めて、久しぶりだね。」
「10年ぶりでしょうか。」
「まさか、君が鳴尾恒三氏のお孫さんだとは知らなかった。」
「そうですね。…私も知りませんでしたから。」
「先日、鳴尾氏から聞かされて知ったんだ。」
「…わざわざ、先生にお伝えするほどの事ではないのにすみません。」