私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


驚く菜々美に気を遣ったのか、その人は…
白い割烹着の袖で目元を抑えると、にっこりと笑顔を作って言った。

「ようこそお越しくださいました。菜々美様。」

「初めまして…。」
「太一郎様によく似ていらっしゃるから、お初めてとは思えません。」

「そうですか…。」
「さ、どうぞお入りくださいませ。」

一歩玄関から中に入ると、吹き抜けのホールになっていた。
思わず見上げてしまう。

「菜々美さん。」

廊下の奥から高村弁護士が出て来た。
勝手口から中に入ったのか…。私よりよっぽどこの別荘に慣れている。

この男は、家族同然って立場かなと思い至った。

『やっぱり、嫌なヤツ。』

「皆様お待ちでございます。」
「わかりました。」

さっきまで緊張して帰りたかったが、高村の態度で私の心に闘志が湧きあがった。

『逃げる訳にはいかない。』

勘当されたとは言え、父も母も私も、何にも悪い事なんてしていない。

堂々と顔を上げて、鳴尾家の人々に挨拶してやろうじゃないか。


『瀬川菜々美』は、こんな人間だ。

世間では良い事や幸せな事を糧にして生きている人が殆どかもしれないが、
私のように『負のエネルギー』を力に変えて生きている人間だっている。

辛い事や悲しい事だったり、
今のように悔しい気分にされた時…エネルギーが湧きあがる。



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