私を赤く染めるのは
「そ、そんなこと急に言われても。碧人くんはずっとお兄ちゃんって感じだったから」
好きか嫌い。そんな二択を用意せずとも碧人くんのことははっきり好きだと言える。
ただ、それはお兄ちゃんみたいに優しくて頼りになる碧人くんのことだ。
碧人くんを恋愛の対象として見たことは一度たりともない。
「一回本気で俺のこと考えてみて。お兄ちゃんの友達でも、教師でもない俺自身のことを。返事は急がないよ。元々、ゆづが卒業するまでは言うつもりなかったんだし」
碧人くんはそう言うと、途中になっていた私のシートベルトを締めて車を走らせた。
車内には行きとは違い、洋楽だけが響き渡る。
同じ道のりのはずなのに、帰りの時間はとても長く感じた。
「今日はありがとう」
「こちらこそ、あ。さっき言ったことだけどあんまり重く考えないで。けど、ちゃんと頭の隅には置いててほしい」
「……わかった」
碧人くんはああ言ったけれど、頭の隅になんか置いておけない。
現にあんなに楽しみにしていたパンケーキの味はもうすっかり思い出せず、頭の中では碧人くんの言葉だけを繰り返し反芻しているのだから。
碧人くんは真剣に気持ちを伝えてくれた。
だから、私もきちんと向き合ってから答えを出さなくちゃ。