私を赤く染めるのは


「明日から夏休みかー。なんか一学期もあっという間だったね」

小学生の頃からの親友、松村 朱莉(まつむら あかり)は鏡片手に前髪を整えながらそう言った。

流れ方が気に入らない様子でさっきからいじっては直すを何度も繰り返している。

揺れるハチミツ色の髪は朱莉の白い肌と整った顔立ちによく似合い、ふとした仕草でさえ絵になってしまう。


「てか宮ちゃん遅いね」

宮ちゃんとは担任の宮田先生のことだ。



今日は一学期最後の登校日。

すなわち終業式の日で私達は先生が来るまでこの2ーAの教室で待機している。



「朱莉は明日からオーストラリアだっけ?」

「そー。今年はパパとママが張り切っちゃって明日の朝には出発だって」

朱莉の両親は2人揃って会社を経営しており、長期の休みになると家族揃って海外旅行へと出掛けるのが恒例だ。

海外から帰国してもお祖父ちゃんの別荘へ泊まりに行ったり、会社のパーティに参加したりと何かと忙しい。

「今年も朱莉がいない夏か〜。つまんない」


「可愛い奴め。お土産買ってくるから元気出しな?あ、家にこもってBijouばっか追っかけてないでたまには外に出なさいよ」

「はーい」

朱莉はまるで母親のようなことを言う。

そんな他愛もない会話を続けていると、机の上に置いていたスマホの画面がパッと光った。


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