激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 あの日、病院に連れて行ってシャンプーをしたあの雑種犬のモップは、とても可愛い子犬ちゃんで、もちろん肉球の匂いも堪らない良い子だった。

「先輩って、犬飼ってましたっけ?」
「え?」

同僚とランチを一緒にする機会が増えていたけれど、それに伴って石井くんとの遭遇が増えた昼休み。
いつものように空いているロビーの席で買ってきた適当なサンドイッチを食べていると、石井がやってきてそう言ったのだった。

「突然なんで?」

もしかして、犬臭い?
さすが調香品を営業しているだけある。
いや、でも匂いフェチの私が犬の匂いを香水のように纏っているはずないし。
混乱する私に、石井くんが携帯の液晶画面を指さす。

「いつもロック画面、調香前の素材とか、完成品とか色気のないもんだったでしょ」
「そうだっけ?」
「石井くん、チェックの仕方がきもーい」
「や、違うんですよ。営業だから、色々香水の知識とか勉強したくて、先輩の知識を吸収したくて」
「意外と真面目―」

私もゲラゲラ笑ってごまかしておいた。
待ち受けは、宇柳さんが飼いだしたモップ犬のモップだ。いや、まだ名前で宇柳さんと争っている段階なので、明言はできない。

「この子ね、庭に迷い込んでいたからお迎えしたの。トイプードルかマルチーズの血が混じってるのか、毛がモップみたいに伸びててね」
「あら、可愛い。雑種なの?」
「雑種でも高貴な人間と一緒に居れば顔が高貴になるのよ」
「半端ない犬馬鹿っす」
呆れて口が塞がらない石井くんとは反対に、斉木さんは爆笑している。
< 101 / 168 >

この作品をシェア

pagetop