激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
思えば、調香師としてただひたすらに働いてきたと思う。
最初は、結婚式場の教会のステンドグラスに魅了されて、宝石のように美しいガラスにときめき、自分でデザインしたガラス瓶に自分好みの香りを閉じ込めたいと、デザイナーになりたいなと淡い夢を描いていた。
それを目指そうと両親に話した翌日、姉がジュエリーデザイナーになりたいと専門学校に行くと話し出した。
それを両親が「応援するわよ」と温かく送りだした日を思い出した。
あの時に、自分は姉よりも蔑ろにされていると少しでも気づけば良かったのに。
おかげで、自分の好きな調香師として働けているんだから、あのルート分岐点で正解に進めた幸運だったはず。
今まで堅実に生きてきて、正解だったことはあったのだろうか。
四日後に日本に戻って、私のせいではないのに結婚の白紙を周りに説明しないといけない。
姉と優希なんて二度と会いたくないから、もう家に帰ることもできないな。
そう考えると、急に怖くなった。
あんな家族でも、明日から私には信用できる血の分けた家族がいなくなる。
馬鹿みたいだ。
恋愛も、家族も、クソ真面目な私も嫌いだ。