激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす


 ***

 携帯もパソコンも持ってこなかったけど、現地だけで使える携帯を、美麻が契約してくれていた。
 その画面を眺めていると少しだけ安心した。

 優希や両親の着信に心が動揺しなくてすむ。
 帰国したら、真っ先に登録を解除しようって思えた。

 プロジェクターを借り忘れたと、ロビーへ向かえばカフェの窓際に座っている彼が見えた。
 一瞬ですぐに彼だと気づけるほど、回りの視線を全て惹きつけるような人だ。

 彼のパソコンの横に、氷の溶けきったブラック珈琲を見つけた。珈琲の水面に氷の溶けた白い層が出来ているのが、多忙さを演出している。

 何を思ったのか、正面の椅子に体育座りで座ると、彼がちらりと此方を見た。

「数時間で寂しくなるほど、俺に会いたかったと」
「いや、嫌な女なので仕事を邪魔してやろうかなって」

 正面に私がいたら、集中もできないだろうと煽る。
 すると彼は視線はパソコンに移し、口元だけ微笑んだ。

「邪魔じゃないな」
「折角のバカンスの地で、パソコンと向かい合ってるって寂しくないの」
「君が正面にいるなら寂しくないかな」

 何を言っても、私をからかうような返答がすぐに出るのは天性なのかと関心しそうになる。

「もう少し良い子にしといて。終わらせる」

 再び仕事に集中し始めると、私の存在なんて忘れたかのようにパソコンを叩く音が響きだした。
 窓から見えるプールには、半分以上日本人だと思うカップル達が泳いでいる。
 テーブルの横に置かれていたモンテスラの葉を見ていた方がまだ心が安らぐのではと、繊維を数えて時間を潰した。

 一度、彼が左手を動かし、コップを握ると氷の層を飲んだ。

 不満そうに眉を歪める彼とは対照的に、私は彼の腕から微かに香る香水にうっとりする。
 今日は手首につけているんだ。
 昨日は首だったと思うけど、手首は汗が交わりにくいから少し残念だ。
 私はやはり彼の匂いが混じったラストノートの方が好きだと思う。
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