激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 美麻にここまで迷惑をかけるつもりでは無かったので、本当に申し訳ない気持ちとやるせなさで一杯だ。

「もしもし」

 震えるような声。

 つい数日前まで、この人と結婚する未来を夢に見ていた。
 今は、声を聞いただけで腸が煮えくりかえりそう。
 きっと私は、傷ついているのではなくて、優希が姉を選んだ瞬間に、彼を敵だと認識してしまったんだ。

「もしもし」

 もう一度聞こえてきた声に、大きく息を吸い込む。

「中途半端に優しくしないで。探してくれなくて結構よ」
「きちんと謝りたい」
「残念。私は、別にショックで飛び出したわけじゃないから」
「ーー美優」
 今にも泣き出しそうな声に、口元を抑える。
 吐きそうだ。気持ちが悪い。

 なんで姉を妊娠させておいて、被害者みたいな声を出すの。

 必死で口を押さえていると、受話器を持っていた手首を掴まれ、受話器を奪われた。
 そして引きよせられて、彼の胸に飛び込んでしまった。

「君、しつこいね。彼女はもう君に1ミリもきもちはないよ」
 目を伏せて、勝ち誇ったように笑う彼が今は本当に正義のヒーローに見えた。
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