激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
「……じゃあ、社長、私に当日ギリギリまで秘密にしてたってわけか。どうしてかな」
「さあ。てか、見てくださいよ。あれ、高級外国車ですよ。左ハンドルなのかな」
石井くんは日本では購入が難しい外国車にテンションを上げているようだ。
「ふうん。車にに必要なのは、新品の皮のシートの匂いだと思うんだけどねえ」
それにしても、取引先にそんな浮ついた車でやってくるなんて、どんな大会社の社長なのだろうか。うちが取引している会社で大手と言えば、せいぜいネット通販会社とか化粧品会社ぐらいかな。 私もを窓から確認しようとしたら、石井くんが大袈裟にため息を吐いた。
「……本当、守屋さんって男心が分からないっすね」
落ち込んでいるかと思うほどテンションを下げられると、申し訳なくなる。
気遣いが出来ないのは私の方か。
自己嫌悪に陥りそうになったので、後輩に素直に謝る。
すると内線で受付から電話がかかってきた。
「すみません、守屋さん。非常に言いにくいんですが」
もう取引相手が来てしまったので下に下りてきてとの連絡かと思ったが違った。
「守屋さんのご家族と名乗る女性が、その下に来ております」
頭が痛い。
私にならば常識外の行動をして迷惑かけてもいいと言うことなのだろうか。
「分かりました」
全てが終わったら接近禁止を伝えておこう。
ただ姉が私の言葉を素直に聞くタイプではないのが、頭痛の原因の一つでもある。
「守屋さん、先方が来ているのでサンプルを持って会議室へ来てくれるかな」
社長の声がエレベーターの前から聞こえてくる。 私は頭を下げて、下に身内が来ていることを伝えた。