激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 傲慢に笑う姉が、本当に苦手だ。

 ブランドのワンピースと耳元で揺れる大きなピアス、そして小さな顔に整った顔のパーツ。
 姉妹でどうしてここまで正反対なほど、綺麗なんだろう。

 綺麗ならば、性格も綺麗であってほしかった。

「あんたに罪悪感でいっぱいの男なんだから、泣きつけばワンチャンあるけどさ。私は選ばれただけ
で、アンタに慰謝料払う理由は無いのよ」


 それを伝えるだけに、アポもなく会社にやってこれる性格が凄い。
 今の姉には、私の婚約者を奪えた優越感しかない。
 そんな彼女を選んだ優希にも今はもう何も感情が沸かなかった。

「それより優希に聞いたけど、ハワイで男と遊んでたの? あんたが?」
「悪いけど仕事中だからさっさと帰って。今後は会社に入れないように言うから」

 はあと大きなため息を吐いたら、何故か姉は馬鹿にしたように笑う。

「婚約破棄されて自棄になってホストでも買ってハワイに連れて行ったの?」

 なぜそこでそんな思考回路になるのかが謎だ。私がそんな性格にみえているのかな。

「常識とかないの? 仕事中だって言ってるんだけど」

 受付の同期も心配げに此方を見ている。
 私の言うことなんて聞いてくれない相手に、頭を抑えてため息を吐いたときだった。

「美優」

 最初に気付いたのは、香りだ。
 声ではなくその香りに、心が騒いだ。
 振り返ると、微笑んでいる男性に目を大きく開いて凝視したまま固まった。
 数日だけの思い出。
 もう二度と会うことは無かったと思っていたのに。

「お姉さんが来てるって聞いたけど、俺は挨拶した方が良いかなって」
「なっ」
 私でさえこの状況が分かっていないのに、彼は私の頭を撫でた後、姉の方へ向き直った。
「後日きちんと挨拶に行こうと思ってましたが、美優の婚約者の宇柳聖です」
「は?」
 姉に名刺を渡すと、姉は名刺と彼の顔を交互に見た。
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