激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
美術館を回り、ステンドグラスを作りと気づけば空はオレンジ色に染まっている。
「今日はそのまま帰宅していいらしいので」
「そうか。じゃあ送ろう」
「副社長! 僕、まだ美術館で仕事が残っていますので、先に送って頂いてもいいですか」
松永さんが二階で美術館長と話しながら、こちらに声をかけてくださった。
そういえば、ここに送ってくれてからずっと別行動していた。作品の展示について、資料に目を通しているらしい。
「いえ。副社長自ら送って頂くわけには」
「いや、構わない。無理をして出向いてもあったのはこちらだから」
宇柳さんは私が作ったスタンドミラーを、紙袋ごと奪うと、駐車場へ向かってしまった。
『今日、アルカディアに来てもらえるかな』
「じゃあ、家の方向教えて」
携帯を開いて一番に目に飛び込んだ優希のメッセージと、宇柳さんの言葉が重なる。
アルカディアは、私と優希がバイトしていた結婚式場だ。オーナーが仲人を引き受けてくれていたので、一刻も早く謝罪しなければいけない。
優希たちと縁が切れるのが速ければ早いほど助かるけれど、奇妙なタイミングだ。
「どうした?」
素直に言うか悩んだ。きっと宇柳さんは自分から巻き込まれようとしてくる。
「いえ。えっとやはり駅でおろしてください」