激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす
オーナーの好きな和菓子屋『なごし』のどらやきを買ってから謝罪に行かなければいけない。
私が取り繕った笑顔を向けると、一瞬の隙を突かれて携帯を奪われてしまった。
「ふうん」
「何するんですか!」
「アルカディアのオーナーは金谷さんだったかな。うちのカフェのマドレーヌも好きなはずだ」
松永さんに電話すると、マドレーヌの入った紙袋が届けられた。
「送っていく」
どこまで迷惑かけてしまうのだろう。
どうにか料金だけは受け取ってもらったけれど、車の中は少し重い沈黙が続いた。
私が話したくないのを察してくれた、彼のやさしさなのだと思った。
***
十九時を過ぎたあたりで、結婚式場へ着いた。
新郎新婦の打ち合わせ室は、どこも外から明かりが見える。
平日なので今日の式はなかったらしいけど、二十時からコース料理の試食会が入っているようで、会場準備でスタッフが出払っていた。
「――美優」
個室の打ち合わせ室前で、優希が私に気づいて駆けてくる。
その姿になぜか背中にぞくっと悪寒が走る。大きく身体が揺れてしまった。